AK note

ビデオゲームの考究と企画についてのヒント

アイデアの善し悪しを直感的に判断する『アイデアスケール』という論理的発想法

新しい企画のアイデアを思いついた時や他者が提案したアイデアを聞いた時など、それが良いアイデアなのかどうか、どのように判断すれば良いのでしょうか。

企画を考えている時に面白いアイデアが1つ浮かんだ瞬間、それに付随する具体的な設定がズルズルっと連鎖して思いつくような経験をしたことはありませんか。「基本のアイデアがそうなっているなら画面のレイアウトはこうしよう」とか、「ボタンの操作はこうした方がアイデアを活かした遊びが出来る」とか。

これはゲームクリエイターに限ったことではなく、日々繰り返してきた仕事の経験が、発せられたアイデアに刺激を受けてそのような連鎖になって出てくるものだと思います。良いアイデアとされるものは往々にして経験則に基づいた瞬発力を持っているものです。

こういう頭の中に起こる一連のアイデアの連鎖を抽象的なイメージのままにせず、常に明確な基準を持ってそれを体系化し、考えを整理して瞬時に判断出来るようにしておくとプランニングや他のアイデアの善し悪しを決める時に有効です。

具体的に説明すると、連鎖するアイデアのクオリティーを距離に変換し、元のアイデアを中心としてそこから放射状に線を描きます。例えばアイデアから連鎖した設定に画面レイアウトがあり、その内容としてキャラクターの位置やテキストの表示方法などしっかりとした具体的なイメージまで瞬時に思いついた場合なら、その放射状の線は長く、逆にぼんやりと抽象的なら短く線を引きます。

f:id:A9unit:20160802224047p:plain

これは何かというと瞬発的なアイデアのレベルを表していて、放射状に延びる線が沢山あって距離が長いものは多くの連鎖するアイデアが具体的に浮かんでいて、逆に線が少なく距離も短いものはあまり連鎖するアイデアが出ていないことになります。

印象として大きく花が咲いたようになれば良いアイデアで、まだつぼみのようになっているものはあまり良くないということです。このように図形化したものをここでは『アイデアスケール』としておきましょう。

例えば『プレイヤーキャラを頭部、胴体部などパーツ毎に組立ててキャラ作成出来る2D横スクロールのアクションゲーム』を制作するとします。このアイデアから瞬時に思いつくアイデアは次のようなものがあります。

▼『プレイヤーステイタス』

色々な特徴を持ったデザインがあるので各パーツに個別のステータスを設定して組み合せ毎にプレイヤーの動きが異なるようにする。

▼『ステージ設定』

ゲームクリアとは別に「キャラ作成」を楽しむもう一つの遊びとして「ステージ攻略」の設定を入れる。具体的には一方通行のステージではなく、全てのステージが循環していて往路、復路のどちらの方向からでも進むことが出来るようにする。

▼『ストーリー』

「キャラ作成」に対応する物語として「夢の中の不思議な世界を冒険する」という設定にする。

これらをアイデアスケールで表すと次のようになります。

f:id:A9unit:20160802224046p:plain

イデアというものは設定通り最初から順番に浮かぶものではありません。しかし浮かんだアイデアが後で使えるかどうかということは非常に重要です。

イデアスケールの特長としては、

・基になるアイデアの評価が図のイメージで瞬時に判断できる。

・連鎖するアイデアが互いに関連していなくて辻褄が合わなくても純粋に評価できる。

・音、絵、動作設定などジャンルを問わず個々に評価しながらもゲームの全体像が総合的に判断できる。

このアイデアスケールは慣れるまでは実際に紙に描いて図式化すると理解し易いと思いますが、基本的にはアイデアを聞いたその瞬時に、頭に描いて判断するためのものです。

私はいつもこれを頭に描きながら、イケる、イケないを判断します。人から聞いたアイデアや、ふと思いついたアイデアなどもこれで判断しています。良いアイデアだと思っても連鎖するその他のアイデアが思い浮かばず保留にしたり、捨ててしまったりする企画もありました。

それともっと重要なことは、人のアイデアを正しく評価することです。立場上どうしてもそのような判断をしなければならない場合など、アイデアを判断して表明することは責任を伴うとても難しい仕事です。

以前知人の会社で開発中のゲームについて意見を求められたときも、頭の中にアイデアスケールを思い浮かべながら話を聞いたことがありました。驚いたことにその時瞬間的にもの凄く大きな花が頭いっぱいに咲きました。

私はそのままの感想を言いましたが相手方はどうだったんでしょうかね。大げさに聞こえたのか、お世辞に聞こえたのか、ただ喜んで私の話を聞いておられましたが。勿論その後発売された件のゲームは世界的に大ヒットしました。

このアイデアスケールはある意味では直感的に判断しているような印象がありますが、それぞれ関連する事柄には具体的な理由があるので非常に論理的な発想方法です。しかし連鎖するさまざまなアイデアが頭の中に浮かぶ速さは一瞬です。ですからそれを人に説明するときはより具体的に、時間をかけて、丁寧に行なうことを心がけることが重要だと思います。そうしないといい加減な判断をされたと思われる恐れがあるからです。

 

*blog "games be" 2014年記事の加筆・修正