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ビデオゲームの考究と企画についてのヒント

ゲームの中の世界に存在するルール設定は誰のものか

ゲーム(システム)の中を『特殊な規則構造を持った世界』という観点から見た場合2つのタイプに分けることができます。ひとつは1Pプレイ型もしくは2P協力プレイ型、もうひとつは2P対戦プレイ型です。後者の場合2Pが協力型ではなく対戦型であることがポイントになります。

1人で遊ぶ場合や2人で協力する場合そのゲームのルールは当然コンピュータに準じます。どのようなルールであってもそのルールに従ってプレイしなければなりません。ですから常にイニシアティブは設定側にあるといえます。

ゲーム作りは異世界を構築することであり、そこに存在する基本的な規則はその世界のものです。異世界とは別に異質な見たこともない場所ということではなく、現実とは違うゲームの世界という意味合いが適当だと思います。

ですから現実にある街の風景をリアルに再現した世界でも、ゲームの都合で時間の進む速度を上げて展開を速くしたり、ある地点からその先には進めない道が存在するなどという現実ではありえないことも自由に設定することができます。

ルールの存在はゲームの面白さに直結していて難易度や操作感にもそのまま影響します。ですからルールはゲームシステムそのものであると言うこともできます。

 

では2P対戦型ではどうでしょうか。ここで一番重要視しなければならないのは平等であることです。それは対コンピュータではなくそれぞれのプレイヤー(ユーザー)に対するものです。

対戦型の面白さはその『公平性』にあります。お互い同じ条件のもとで競うということが前提になっているわけですから、1Pプレイ型ゲームのように制作側の勝手で面白い設定を入れても、双方のプレイヤーのどちらかに有利になってしまうとゲームとしては成立しません。

制作側はあくまで対戦用の場をフラットな状態で提供することを目指します。プレイヤーに負荷をかける場合も双方同じ状態になるように考えなければなりません。ですから都合はプレイヤー側にあります。

また、競い合う状態をもっと面白くしたりエキサイティングにするために既知のルールを変更する場合もあり、これによって1Pプレイ型ゲームの場合とは異なる現象が起きる事があります。

 

たとえばプロ野球では『インフィールドフライ』というルールがあります。野球を知らない人にも分かり易く一言で言うと「敵が打ち上げた球をキャッチ出来なくても(たとえ落としてしまっても)アウトとする」というものです。

野球は攻撃側と守備側に別れて得点を取り合うゲームです。攻撃側は相手が投げた球をバットで打ち、決められた範囲に球を落下させればフィールド内のベースに進出できます。これを繰り返して3つのベースを順番にタッチした後、元のホームベースに到達すると1点加算されます。

守備側は攻撃側の打った球を地上に落下する前にキャッチすればアウトにすることが出来ます。もし落下させてしまった場合でもその球を進出した攻撃側の打者にタッチすればアウトにすることが出来ます。ただし打者がベースに接触している場合はアウトにすることは出来ません。ベースは安全地帯というわけです。

 

『インフィールドフライ』はある決められた条件のもと、打った球が空中に上がっている状態で審判が判断して「その球は落ちても落ちなくても今アウトとします!」という意味で指さし宣告します。なんだか草野球みたいですよね。プロ野球中継でも時々見ることができます。

 

その条件を説明すると……、

攻撃側の選手がすでにベースにいる状態において、その近く(インフィールド)に次打者の打った球が飛んだ場合、そのベースにいる攻撃側の選手は2つの可能性を考えます。

 

1)球をキャッチされて打者がアウトになる

この時ベースにいる攻撃側の選手は次のベースに移動することはできますが、必ず守備側が球をキャッチした後から現在のベースを離れなければならないルールがあります。ですから打ったと同時に走ることは出来ません。そのうえ自分の近くに球が飛んだのでキャッチされてから走るとすぐに返球されてきて、走っている途中で直接タッチされてしまうので移動することは不可能です。結果そのままベースを動かないという状態になります。

 

2)球が地上に落ちる

この場合その球を打った攻撃側の選手はベースに進出します。そのためすでにベースにいる選手は今いるベースを空けなければならないので必ず次のベースに移動しなければなりません。

 

さて、この状態で守備側の選手が「簡単にとれるであろう空中に飛んだ球」をわざと地上に落としたらどうなるでしょう。

ベースにいる攻撃側の選手はキャッチされてしまうと思ってベースを離れないように接触した状態を保ちます。(上記1の状態)ところが球は地上に落ちてしまったのでベースを空けるために移動しなければならなくなります。(上記2の状態)

ベースにいる攻撃側の選手は走るタイミングが遅れてしまったために返球されてアウトになり、さらに落ちた球がベースに近かったので今打った選手もアウトになります。結果的に守備側の「わざと落球する」という行為で2つのアウトを連続で取られてしまうことになります。

 

このように作為的にミスをすることで得をする行為は攻撃側も見ている観客も納得しにくいものです。またこのような状態が続くと一度の攻撃で得点する機会が極端に減ってしまうのでゲームそのものの進行にも悪影響を及ぼします。

『インフィールドフライ』というルールは複雑な野球規則の隙間にパテを埋め込むようなもので、設定としては合理的でもなく美しくもありません。しかしゲームの骨格が崩れてしまうくらいの状態が起きてしまう恐れがある場合仕方がないのかもしれません。

 

対戦型のゲームにおいて基本的な規則の範囲に『空中のボールをキャッチするとアウト』という共通する承知のルールもゲームの平等や調和を保つような理由から例外的な規則を設けることがあるということです。

これは設定側ではなくプレイヤー側に基本的な規則のイニシアティブがあることを示しています。ですから同時にプレイする複数のプレイヤー(ユーザー)の『公平性』を保つことを目的とするなら、多少ゲームとして違和感のある設定であっても、美しくなくても、取り入れる必要があるということです。

 

2Pの対戦型のゲームを考える場合はこのような事柄を考慮し、後で何度も修正するような状態にならないよう、双方のプレイヤーが行なう可能性のある状況をあらかじめ予測してゲーム設定しなければならないと思います。

 

 

*blog "games be" 2014年記事の加筆・修正