AK note

ビデオゲームの考究と企画についてのヒント

日常にあるいろいろな不思議がオリジナルなアイデアを創造する

新しい発想からモノを創り出すこと。

これはどんな分野においてもとても難しいことです。しかし発案を生業にしている企画者はこれを避けて通ることは出来ません。

日常的にアイデアを蓄積して企画に反映させる人もいれば、その場のインスピレーションから練り込んでいくという人もいますね。いずれも性格的なもので善し悪しはないと思います。

イデアを蓄積することは重要ですが、あまり具体的なアイデアを後生大事に持ち続けていても使いどころがないと意味がありませんし、それが自分の最高のアイデアだと錯覚してしまう恐れもあります。私の経験からいうと、自分の思う最高のアイデアは使うか、あるいは捨ててしまわないと新たな最高のアイデアは生まれないように思います。たぶん思考のキャパシティが狭いのではなくどちらかというと自我の顕示欲の問題かもしれません。

 

それでは、具体的ではないアイデアとはどういうものでしょうか。

独自のストーリーやゲームシステムなどを具体的なアイデアだとすると、それとは対照的にボンヤリとした抽象的なイメージをいうのでしょうか。しかしそれではアイデアとは言えませんね。

一般的には、たとえばアクションゲームの攻撃方法の一つとしてこういうやり方もあるなあ…… とか、デモ画面でこういう観せ方ができるなあ…… とか、こういうことを言うのでしょうけれども、これも規模は小さくてもしっかりとした具体的なアイデアだと思います。

 

私見ですがアイデアの蓄積とは、答えではなくむしろ疑問の集積だと考えています。

全体的な構成にしろ演出の一部分にしろ、結果として導き出されたアイデアはいずれも具体的であり最終的な解答といえます。「どのように攻撃すればおもしろいか」が問いになり「局部的に放たれたマイクロ波が敵の体を高熱にして破壊する」がその答えです。

もちろん答えとなる具体的なアイデアの蓄積も必要ですが、その答えを導き出した問題定義の段階ですでに使用範囲を限定しているわけで汎用性があまりあるとは言えません。

ゲーム制作という商品開発においてそのアイデアを考える時、制作するプラットフォームやターゲットユーザー、ゲームジャンルなどさまざまです。理想的にはどのような条件でも幾つかのアイデアを提示し、そこからオリジナルな発想に転換することができればいいわけで、それを目指すためには上記のような具体的なアイデアだけでは対応することが難しい場合もあります。

 

では疑問とはどういうものか、発想の順番を逆にして考えてみると……

「どのように攻撃すればおもしろいか」という疑問からもう少し範囲を広げると

「何かを破壊したり消滅させたりする方法」となります。

そうして考えてみると世の中には破壊するものも消滅させるものも沢山あります。叩いたり引っ張ったり落したり燃やしたり……

この世の中にある物や現象をゲームの攻撃方法に転換すればいいのですが、金槌や包丁はあたりまえ。火や水ではインパクトがない。でもハンドパワーや不思議な力では説得力がありません。

 

そこで利用したいのが普段何気なく疑問に思っていることです。

身近にあるのによくわからないこと。不思議なこと。そういう事柄を日常的に感じながら「おもしろい」と思って記憶に留めておくことこそ『アイデアの蓄積』となるのではないでしょうか。

それはゲームとは関係のないものです。真夏のアスファルトに立上がる蜃気楼のような歪んだ風景。冬の寒い朝、舗装されていない土の道を歩くとザクザクと音がする現象。また自然現象だけではなく普段使っている日常品や器機なども同様です。電子レンジが食品を温める仕組みは、最初説明を聞いてもよく理解出来ませんでしたがそれだけにインパクトのあるものでした。

 

さて、そんな日常の「おもしろい不思議」を記憶に留めつつゲーム企画に応用するとこんな感じです。……

「電子レンジは食品を科学的な方法で内部から温める」

     ↓

「攻撃方法に使えないか」

     ↓

「仕組みはマイクロ波を一定の周波数で照射することで対象となる有機物の水分子が振動して高温になる」

     ↓

「それなら水分子のない無機質なものには効果がないというギミックも活かせる」

     ↓

「局部的に放たれたマイクロ波が敵の体を高熱にして破壊するというマイクロ波光線なる特殊武器として設定」

 

というような工程で攻撃方法を設定することが出来ます。

 

具体的なゲームのアイデアは使わないと古くなってしまいますが、日常にある不思議はある種普遍的といえます。ですからどんなものでも見る方向を変えながら「おもしろい」と感じて記憶していればいつか使う瞬間がくると思います。

それは記憶に留めておいた不思議を疑問として導き出すセンスがゲーム企画のオリジナルなアイデアを創造するということです。